趣味で作曲をする人は、ひとりでDTMを楽しむことが多いと思いますが、仕事でアーティストの作曲・編曲をすると、どうしても他の人とやり取りをしないといけません。
仕事をよくやりとりし、内容をよく分かり合っている人同士だと、DAWのセッションデータを渡せば済むのですが、初めてやり取りするエンジニアさんや作編曲家さんなど、環境(持っているDAWやソフト)が違うので、説明や対応にとても時間がかかるしセッティングが面倒です。
そんなときに必要になるのが、パラデータです。
今回は「パラデータ」をわかりやすく簡潔(かんけつ)に説明しようと思います。
「パラデータ」って何?と聞かれた時に、今回の記事を参考にしていただければと思います!
パラデータとは?
パラデータ(Para Data)とは、レコーディングした各楽器のトラックデータを、ひとつずつオーディオファイルにしたデータのことをいいます。
このデータを渡すと、受け取った人がそこの環境でミックスや追加レコーディングを行うことができます。
最近では歌ってみた動画などで、オケ2mixと歌データを簡易的にミックスするという機会がとても増えましたが、やはりパラデータから作ると歌を引き立たせるミックスを作ることができます。
DTMで仕事をしていこうと思う人は、パラデータの書き出し方を覚えておくことは必須になります。
一般的なパラデータ
一般的にプロのレコーディングで一曲をパラデータにすると50〜100個のファイルができます。
これはジャンルなどによって使用しているトラックの数は違ってきます。
生録音か打ち込みでもトラック数は変わってきます。
データを細かく分けていくと、一曲で50個以上のファイルができてしまうのが分かると思います。
ドラム
各キットごとに分けるので、ドラムだけでもかなりのトラック数になります。
- キック・イン
- キック・アウト
- スネア・トップ
- スネア・ボトム
- ハイハット
- ハイ・タム
- ロー・タム
- フロア・タム
- オーバーヘッド
- アンビエンス・ニア
- アンビエンス・ファー
上記は基本的な例ですが、もっと細かくマイク録りをするエンジニアさんもたくさんいます。
ベース
「DI」「アンプ」「サブベース」など、シンプルなベースでも細かく分けられます。
ギター
ベースやギターはアンプシミュレーターでのレコーディングも多くなってきましたが、アンプ録りになると「スピーカーの音」「少し離れた音」「部屋鳴り」などいろんなトラックを使います。
ギターもラインの音も録っておきます。
そして、ギターは何本か重ねて録るのでその分トラック数も倍々になっていきます。
ストリングス
ポップやロックのストリングスも「第1 バイオリン」「第2 バイオリン」「ビオラ」「チェロ」に分けて×2という作り方をすると、結構トラックを使います。
ブラス
ブラスも同じく「トランペット」「トロンボーン」「サックス」などさらに細かく分けるときもあります。
シンセサイザー
シンセは少し音色が変われば、細かくトラックを分けて制作する人もたくさんいます。
その場合、シンセだけですごい数のパラデータになる人もいます。
ボーカル
歌関係もかなり分けられます。
メインボーカルは曲によってはセクションごとに分ける場合もあります。
コーラスも「字ハモ」「ウーアー系」「合いの手」など細かく分けます。
さらにダブルも用意するとすごいトラック量です。
パラデータの決まり
そして、各トラックのデータをどのような状態で書き出せば良いのかというところですが、一応決まりごとはあります。
❶ エフェクト関係は基本的に切る
特にリバーブやディレイのような空間系のエフェクトは必ず切ります。
コンプやゲートなどのダイナミクス系も切ります。
音作りのために作ったEQなどはそのままにする場合もあります。
しかし、エンジニアさんによってはそれも嫌な人もいますので、基本は素材の音で書き出します。
バスにかけているエフェクトは、まとめた音に対しての効果なので、単体で出すトラックデータは必ず切ります。
ギター、ベースの音はラインの音も用意しておいた方が確実です。
❷ パン振りはセンターに
パンが振られた状態だと、取り込んだ後に管理が難しいので、パンは録音した時の状態のセンターに戻します。
❸ 名前をわかりやすく
トラックの名前は誰にでも分かる表記にします。
できれば同じ系統の楽器が並ぶように、頭に数字を入れておくとより親切です。
❹ オーディオファイルは圧縮データにしない
オーディオファイルは必ず、「WAV」「AIFF」のような非圧縮データで書き出します。
「mp3」のような圧縮データは音質が落ちるのでNGです。
❺ モノラルをステレオで書き出さない
当たり前ですが、ステレオのものはステレオで書き出します。
モノラルのものもステレオで書き出す人がよくいますが、モノラルで録ったものをステレオにすると無駄にデータが増えるだけなので、モノラルはモノラルで出さないと嫌がる人もいます。
❻ サンプル2mixデータも渡す
自分のイメージした2mixを渡すと、パン振りや音作りのイメージが伝わるので親切です。
❼ BPM情報を伝える
作業がスムーズに進むために、BPMを伝えます。
途中でテンポが変わっったりする曲も、設定しないとミックスが難しい場合があるので、必ず伝えます。
❽ ファイル形式を確認
一般的に映像関係を含めた共通のファイル形式は「48kHz/24bit」が多いですが、CD基準の「44.1kHz」で作業をする人もいますし、高解像度で作業をする人はそれぞれ、倍の単位でサンプルレート「88.2kHz」「176.4kHz」「96kHz」「192kHz」を求める人もいます。
ビットデプスも32ビット浮動小数点数(32bit float)を含む解像度で欲しい人もいます。
パラデータを書き出す前に、必ず確認が必要です。
ステムミックスのデータ
パラデータによく似た「ステムミックス」というデータがあります。
- ドラムキットをLRにパンニングした2mix
- ベースのモノラルデータ
- ギターをそれぞれまとめたデータ
- シンセをそれぞれまとめたデータ
- ストリングスをまとめた2mix
- ブラスをまとめた2mix
- 効果音をまとめた2mix
- コーラスをそれぞれまとめたデータ
- ボーカルのモノラルデータ
それぞれステレオ効果のあるパートは2mixで書き出します。
簡略すれば5〜10くらいにもできます。
ま と め
パラデータの受け渡しは最初はとても緊張すると思いますが、相手のことを考えて親切に用意すれば間違い無いです。
とはいえ、慣れないとパラデータの書き出しはとても時間がかかるのであれもこれも用意をすると大変です。
実際、ギターとか混乱するのであんまり細かく分けなくて良いという人もいます。
本当に人それぞれです。
受け取る側を経験すると、的確に何が必要か一番分かるかもしれません。
今回は「パラデータ」をわかりやすく簡潔(かんけつ)にまとめてみました!
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
マサツム